解体工事における水撒きの目的とは?水撒きをしないリスクから法律による規定、効果的な散水方法に関することまで解説

解体工事における水撒きの目的とは?水撒きをしないリスクから法律による規定、効果的な散水方法に関することまで解説

「解体工事の現場で水を撒いているけど、あれに意味はあるの?」と疑問を持ったことはありませんか?

解体工事における水撒きには、大切な目的があります。水を撒かないリスクや法律の規定など、多方面から水撒き・散水に関することや、効果的な散水方法までをまとめました。

工事現場の水撒きに疑問を持った方は、ぜひ参考にしてください。


解体工事における水撒きの目的とは?

解体工事における水撒きの目的とは

解体工事の「散水」とは、水を撒きながら建物を解体する行為です。とくに重機を使って建物を壊す際に多量の水を使用します。

この散水は養生シートと同じく、近隣住民とのトラブルを避けるために欠かせない工程です。ここでは、散水の目的やその効果、そして種類について詳しく解説します。


1.近隣への配慮

大きな建物が解体されるとき、騒音と共に大量の粉塵が発生します。これを軽減するために散水や養生シートが使われます。

とくに住宅が密集している地域では、近隣住民に迷惑をかけないよう事前に工事の説明を行うことが基本です。しかし、実際の粉塵や騒音の程度は工事が始まってみないとわからないことが多いでしょう。

たとえば、洗濯物や車が粉塵で汚れたり、室内に粉塵が入り込んでしまうことがあります。さらに、コンクリート片が飛んできて人に当たったり、大きな音で赤ちゃんが泣いてしまうなど、近隣住民にさまざまな影響を与えることもあります。


2.散水の主な方法

解体工事における散水の方法にはさまざまな種類があります。まず、仮設養生(養生シート、防音・防塵シートなど)を施し、その上で水を撒くことが基本です。これは、粉塵が周辺に飛散するのを防ぎ、騒音をできるだけ閉じ込める役割を果たします。

散水方法は、解体する建物の規模や工事内容によって異なります。たとえば、小規模な木造住宅の解体工事では「ガラシャワー」が一般的です。これは、水を溜めるタンクと発電機、ポンプが一体となった大型散水機です。

広い木造住宅や鉄筋コンクリート造のビル・マンションでは、大量の粉塵が発生するため「ジェットウォッシャー」が使用されます。ジェットウォッシャーは高圧の水を噴射し、広範囲の粉塵飛散を一気に防ぐことが可能です。

ブロック塀や物置などの付帯物の解体工事では「常圧のホース」を使用します。粉塵の量が比較的少ないためです。また、アスベストの撤去工事では「スプリンクラー」を使い、広範囲に水を撒き除去空間を常に湿潤化させることが重要です。このように、解体ケースに応じて適切な散水方法を選びましょう。


水撒きしないことで発生するリスク

水撒きしないことで発生するリスク

水撒きしないことで発生するリスクには、以下の3つが挙げられます。

  1. 洗濯物へ付着する
  2. 外壁や車へ粉塵被害を起こしてしまう
  3. 建物内にも影響がある

ここではそれぞれに分けて解説しますので、詳しくみていきましょう。


1.洗濯物へ付着する

解体工事によって発生する粉塵は、風に乗って近隣の洗濯物に付着することがあります。とくに工事が1週間以上続くような場合、毎日のように外干ししている洗濯物に粉塵が付着し、複数の住宅からクレームが入る可能性が高まります。

このようなトラブルを避けるためには、散水の有無に関わらず、事前に近隣住民への挨拶回りを行い、外干しを控えてもらうようお願いすることが重要です。


2.外壁や車へ粉塵被害を起こしてしまう

解体現場が前面道路に近い場合、通行人にも粉塵の被害が及ぶことがあります。とくに通学路に面した家の解体工事では、子どもへの被害を心配する親からクレームが入ることも考えられます。また、散水が行われていない現場では、作業者が大量の粉塵を吸い込んでしまい、健康被害につながる可能性もあります。

通行量が多い道路に面している解体工事で散水が行われていない場合や、作業者の粉塵対策が十分でない場合には、速やかに各自治体や消費者センターに相談してください。

さらに、外に停めてある車やバイクにも粉塵被害が考えられます。散水が行われていないと、車や外壁が粉塵で真っ白になり、近隣住民から苦情が発生することがあります。

車やバイクに対しては、業者が専用の養生シートを保有している可能性があるため、近隣住民の乗り物への被害が気になる場合には、相談することが大切です。


3.建物内にも影響がある

解体工事で発生する粉塵は粒子が細かく、近隣住宅の室外機から室内に入り込み、住民に被害を及ぼすことがあります。とくに窓を開けている場合には、短時間で大量の粉塵が室内に入るため、クレームが発生する可能性が高まります。

近隣住宅内への被害を最小限に抑えるためにも、散水は非常に重要な対策です。


水撒きに関連する法律や規定

水撒きに関連する法律や規定

水撒きに関連する法律や規定には、以下の3つが挙げられます。

  1. 法律上の規定
  2. 厚生労働省が求める粉塵基準
  3. アスベスト含有建材の解体には散水が必須

ここではそれぞれに分けて解説しますので、詳しくみていきましょう。


1. 法律上の規定

各地方自治体では、一般粉じんや特定粉じんに関する散水の規定が条例などで設けられています。

また、アスベストを含む特定粉じんについては「特定建築材料を薬液等で湿潤化すること」と定めています。そのため、東京都内で解体工事を行う業者は、これらの規定に従い湿潤化や散水しなければなりません。

自治体によって粉じん対策の規定は異なるため、地元の規則に詳しい解体業者に依頼すると安心です。


2. 厚生労働省が求める粉塵基準

国土交通省の「建築物解体工事共通仕様書」では、散水について「ブレーカー、穿孔機、圧砕機など粉じんが発生する機械の使用時には常に散水を行う」としています。

ブレーカーや穿孔機、圧砕機は鉄筋コンクリート造の建物や駐車場などのコンクリート構造物を解体する際に使用される重機です。これらの重機を使用する解体工事では粉じんが多く発生するため、常時散水が必要とされています。

そのため、コンクリート製の建物や構造物の解体工事を依頼する際には、業者が適切に散水を行っているかを確認することが重要です。


3. アスベスト含有建材の解体には散水が必須

アスベスト関連のマニュアルでは、湿潤化する作業部位や散水方法がアスベストの種類ごとに詳細に指定されています。

「湿潤化」とは、解体作業前に対象建材を散水で湿らせ、作業中も継続して散水を行うことです。これは、アスベストが非常に危険な粉じんであるため、適切に湿潤化することで粉じんの飛散を防ぐ意味があります。

マニュアルを遵守するためには、対象建材がしっかりと湿潤化されているか確認し、適切な場所に適量の散水し続けなければなりません。


水撒きと養生の関係

水撒きと養生の関係

水撒きと養生の関係には、以下の3つが挙げられます。

  1. 養生シートの役割
  2. 養生も散水同様に重要な手順
  3. 散水・養生と工事の質

ここではそれぞれに分けて解説しますので、詳しくみていきましょう。


1.養生シートの役割

仮設養生は養生シートや防音・防塵シートなどと呼ばれ、建物を囲むメッシュ状のシートです。このシートは現場を隠すためではなく、粉塵の飛散を防ぎ、騒音をできるだけ抑える役割を果たします。メッシュ状であることで、強風に煽られて倒壊しないように設計されています。シートはしっかりと足場を組み、隙間なく張られるのが一般的です。風の通り道を意図的に作る場合もあります。

養生シートにはいくつかの種類があり、その特徴や役割は異なりますが、一般的な役割は以下の通りです。

  • 粉塵飛散の防止
  • 騒音の抑制
  • 高所からの解体物が周囲に飛び散ることを防ぐ

養生シートは、建物の解体時に発生する粉塵が周囲に飛び散るのを防ぎ、安全を確保します。


2.養生も散水同様に重要な手順

養生シートは、粉塵が外部に飛散するのを防ぎます。一般的な木造住宅の解体工事では養生シートの使用で問題ありません。しかし、鉄筋コンクリート造や鉄骨造の建物では大量の粉塵が発生するため、養生シートに加えて養生パネルも設置されます。

また、アスベストの撤去工事では、粉塵飛散防止処理剤の散布や集塵機の使用など、徹底した粉塵対策が行われます。

さらに、近所への挨拶回りも重要です。解体工事の影響について周辺住民に事前に知らせることで、粉塵に関するクレームを減らすことが可能です。優良な業者では、散水以外にも粉塵対策を徹底しています。


3.散水・養生と工事の質

養生シートや散水の設置は法律で義務付けられていません。そのため、周囲に住民がいない場所では、養生が行われないケースもあります。しかし、一般的な住宅の解体では周囲に他の住宅があることが多いため、通常は養生シートが利用されるでしょう。

ただし、義務ではないため、経費削減のために養生を行わない業者も存在します。同様に、散水を行うスタッフを配置せずに解体コストを下げる業者も少なくありません。これらの業者は周囲の住民に大きな迷惑をかけることになるため、解体業者を選ぶ際には、しっかりと養生シートを設置し、散水も行ってくれる業者を選ぶことが重要です


効果的な水撒き方法とタイミングは?

効果的な水撒き方法とタイミングは?

建物の解体工事では、少しの水撒きではすぐに乾燥してしまったり、弾かれてしまったりするため、効果がありません。したがって、建物全体を水浸しにしたり、ユンボなどの重機を使って大量の水を撒くことが一般的です。この方法であれば、粉塵の飛散を効果的に防げます。

解体工事では、コンクリートガラや木くず、土、泥、金属片、プラスチック片など、多種多様な廃棄物が発生し、これらが現場前の道路にも飛び散る可能性があります。これらの廃棄物を放置すると、通行に危険を及ぼし、周辺環境の悪化を招きます。そのため、1日の作業が終わった後にはしっかりと水を撒いて清掃することが重要です。

このように、解体現場では散水と養生シートの使用が非常に重要です。散水は粉塵を抑え、周辺環境を保護するための基本的な対策です。養生シートは粉塵と騒音の拡散を防ぎ、現場周辺の安全を確保します。これらの対策を適切に行うことで、近隣住民への迷惑を最小限に抑えられます。


水道料金の管理方法

解体工事の水道代は基本的に依頼主が負担しますが、明確なルールがあるわけではなく、業者が負担するケースもあります。

業者が水道代を負担するとしても、その費用は解体工事費用に含まれていると考えるのが一般的です。

いずれにせよ、解体工事の見積もりを依頼する際に、水道代の負担が誰に帰属するのかを確認することをおすすめします。

また、解体工事において依頼主が水道代を負担する場合、たとえば30坪の住宅では約5,000円が必要です。

ただし、以下のような理由で水道代が高額になることもあります。

  • 給水管の破損による漏水
  • 不必要な水道水の使用

これらのリスクを避け、高額な水道代を防ぐためには、工事開始前に水道代を確認し、使用していないときは蛇口を閉めるなどの対策が重要です。


まとめ

まとめ

水撒きの目的から水を撒かないリスク、法律での規定や効果的な散水方法などを紹介しました。水撒きは瓦礫や粉塵の飛散を防止するために大切な作業であり、とくにアスベストなど人的被害につながるようなリスクのある現場では必ず散水される大切な工程です。

工事現場の水撒きに法律的な規定はありますが、罰則はありません。しかし、上記に挙げたような人的被害や周囲の影響を考えると、現場での水撒きは必須と考えてよいでしょう。

水撒きをしっかり行う解体業者は優良であるという見極めにもなります。事前に水撒きの有無や方法、水道料金について業者へ確認し、安心して工事を任せられるかどうかを判断しましょう。

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